専門的な法律の知識に基づき、登記、供託、訴訟などの法律事務の専門家として人気の司法書士は「権利の登記」のスペシャリストです。
そして、この司法書士は独立開業も目指せるというのが、司法書士資格の魅力でもあります。
これから、司法書士で独立を目指している人にとっては、司法書士資格を取得するには、試験合格以外の道もあるの?と、ちょっと気になりますよね。
現実的には、司法書士試験で合格することが一番の近道であることは間違いありませんが、もう一つ司法書士資格を取得する方法があります。
ですので今回は、司法書士試験合格を目指す受験生の方々に向けて、「司法書士の資格取得するための2つの方法」を簡単にお伝えしますので、ぜひチェックしてください。
この記事の目次
司法書士資格を取得するための2つの方法とは?
この記事では、司法書士試験の合格だけではない、「司法書士資格を取得するための2つの方法とは?」ということで、国家試験の合格だけではない道もご紹介していきます。
【方法①】:司法書士試験に合格する
司法書士試験に合格する方法は、司法書士を目指すにあたって一番イメージしやすい方法といえるでしょう。
合格率3%程度と非常に合格率が低い司法書士試験
ただし、この試験の合格率は非常に低く、例年3~5%で推移しています。
実際、直近に行われた2021年度(令和3年度)の司法書士試験でも5%程度でした。
このような合格率の低さから、文系国家資格の中でも最難関資格の一つとして数えられています。
膨大な勉強時間が必要
また、試験範囲も非常に広いため多くの学習時間が必要になります。
一説には3,000時間以上の勉強時間が必要とされ、1年半の学習期間を設定したとしても一日最低4時間は学習しなければいけません。
司法書士試験の合格率が低い理由
また、この資格の難しさは相対評価、基準点の設定という点が挙げられます。
相対評価とは、受験者から見て優秀な受験者のみを合格にするという評価です。
例えば、医師国家試験であればボーダーとなる点数を超えていれば合格とみなされますが、司法書士試験の場合は上位数%のみを合格にするというシステムを取っています。
そのため、簡単な試験で全員が70%以上の成績でも、合格するのは100%正答しているような上位者のみになるのです。
これが合格者を非常に低くしている原因です。
苦手分野があると試験合格は難しい
また、司法書士試験は基準点も設定されています。
例えば、成績上位者に入っていたとしても午前の択一問題、午後の択一問題、記述問題のいずれかで基準点を下回っていた場合は不合格です。
つまり苦手な分野があると不合格になりやすくなってしまうのです。
口述試験の受験
さらにここまでクリアしても合格者は最後に口述試験を受験しなければいけません。
これは、実際に試験担当者と口頭で試問を実施するものです。
基本的にほとんど合格する試験ではありますが、それでも不合格者は発生するため、油断できません。
こういった厳しいセレクションを潜り抜けて初めて試験による免許取得が可能になるのです。
司法書士試験のスケジュール
最後に司法書士試験の簡単なスケジュールを紹介しましょう。
5月に願書提出、7月に筆記試験、10月に口述試験、11月に合格発表という流れです。
ほとんどの司法書士がこのルートで司法書士になるとは言え、かなりシビアであることは確かといえるでしょう。
ただ、記念受験者も非常に多いため実質的な合格率はもっと高いとされています。
【方法②】:法務大臣の認可を受ける
司法書士試験を受けるしか司法書士にはなれないと思われがちですが、法務大臣の認可を受ければ司法書士になることは可能です。
法務大臣の許可を得られれば司法書士になれる
それは、指定された官職(公務員)を通算10年以上あるいは5年以上従事しているという条件を満たした場合です。
具体的には、次の2つのケースで法務大臣の許可を得られれば司法書士になれます。
- 10年以上従事:裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官、検察事務官
- 5年以上従事:簡易裁判所判事、副検事
司法書士試験の合格以上に難しいルート
これらは法務省の職員などのケースがほとんどです。
ちなみにこれらの官職につくのも非常に高い競争率をクリアする必要があります。
そのため、司法書士試験以上に難しいルートに変わりはありません。
むしろ、これらの官職を得る方が司法書士試験で合格するよりも難しいという意見すら聞かれます。
官職を辞めて司法書士になるケースは少ない
また、わざわざこれらの官職を辞めて司法書士になるというケースは非常に少なく、このルートで司法書士になった方はそこまで多くありません。
ちなみにこの制度の根拠になっているのは、司法書士の資格認定に関する訓令として施行された、平成14年4月1日施行の「司法書士の資格認定に関する訓令」第1条(1)および(2)に表記されています。
参考として2条は、司法書士試験での合格者に資格認定する旨が記載されています。
司法書士の受験資格は高卒・中卒でもOK?
この司法書士試験は特別な受験資格はなく、申し込めば誰でも受験できます。
理論上は、中高生でも定年後のシニアでも問題なく、学歴、性別、年齢の関係はありません。
実際の最低年齢の合格は21歳
ただ、実際は高校生で合格することは基本的になく、2022年度は最低年齢が21歳でした。
最高齢記録は80歳(2018年度)という方がおり、たとえ高齢者であっても合格しないということはありません。
司法書士試験は、就職試験のように年齢上限が設けられているということはないのです。
特定の教育機関を卒業というような受験資格も必要ない
また、医療資格のように特定の教育機関を卒業してないと受験できないということもないのです。
実際、この記事を読んでいる方は誰しもが受験できます。
国籍も関係なく受験可能
国籍も関係ないので、中国人でもアメリカ人でも、韓国人でも、当然イラン人でも受験し、合格基準を満たしていれば司法書士になれます。
ただし、日本語以外の言語対応はしていないので、最低限日本語の理解が必要です。
このように非常に門戸の広い試験として実施されており、誰しもが受験できる権利を持っている試験なのです。
参考として、例年の司法書士試験は30代の受験が最も多く、転職などを目的にした方の受験が多い傾向にあります。
司法書士開業は未経験でもできる?
司法書士開業は未経験でもできます。
基本的に後述する登録が完了すれば、問題なく開業はできる形になります。
新規顧客の集客が重要になる
ただし、未経験者の場合は実務を把握していない場合も多いことや人脈がないことから顧客確保も困難です。
試験には合格していても実務自体は素人と同じなので、十分な業務が出来ない可能性もあります。
実務経験がないと顧客離れにつながる
実務ができないと顧客離れも進むので、経営が立ち行かなくなるでしょう。
また、そもそも顧客がいないので売り上げを上げることはできません。
会社員と違い、司法書士だからといって固定給があるわけではなく究極的なことを言えば自営業者になります。
そのため、稼ごうと思えばいくらでも稼げますが、売り上げゼロになることも理論上はありうるのです。
多くは司法書士事務所で経験を積んでからの独立
こういった背景から、多くの方は未経験ではなく、司法書士事務所に数年勤務したのち開業するケースがほとんどです。
未経験者でも司法書士事務所の開業は可能ですが、実務能力がない場合は勤務する形で司法書士の業務を学ぶことをおすすめします。
司法書士で開業するには登録が必要
司法書士試験に合格したら、開業予定の各都道府県にある司法書士会に入会し、日本司法書士会連合会に備える「司法書士名簿」へ登録してもらう必要があります。
この入会と登録の手続きが完了できたら未経験者でも開業することは問題ありません。
入会時に必要な費用
ただし、注意点として入会時に費用が発生することとが挙げられます。
費用は都道府県の司法書士会によりますが、目安として10万円前後になります。
その内訳は次の通りです。
- 登録手数料 25,000円(全国共通)※日本司法書士連合会に納付
- 登録免許税 3万円(全国共通)※国へ納付、オンライン納付ができる
- 入会金 3~5万円(都道府県によって異なる)
他にも業務上で必要な費用
これ以外にも司法書士バッジや職印作成などの雑費で数万円かかります。
バッジは、司法書士の仕事をするうえで必要なもので業務を行う際に司法書士バッジをつけて仕事をしなければなりません。
しかも購入ではなく貸与という形になるので、転売などは当然不可能です。
加えて職印も購入します。
これは、登記に関する書類を多く作成しますが、その際に職印が必須となります。
司法書士は年会費が必要
また、次年度以降は年会費が発生するので注意しましょう。
目安は次の通りです。
- 年会費 20~30万円(都道府県や各司法書士会によって異なる)
ちなみに会費は現金払いになっているので、クレジットカードはもちろん、電子マネーなども利用できません。
このように登録にはそれなりの費用が発生することを考慮しておきましょう。