中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家として人気の中小企業診断士は「国から認められた経営コンサルタント」というのは知られていると思いますが、具体的に「どんな仕事するんだろう?」とよくイメージが湧いてない方もたくさんいらっしゃいます。
最近では、コロナの影響で「補助金申請のスペシャリスト」ということも多くの方に認知されてきたのではないかと思います。
ですので今回は、中小企業診断士の試験合格を目指す受験生の方々に向けて、「中小企業診断士の仕事とは、どんなものか?」ということを簡単にお伝えします。
この記事の目次
中小企業診断士って、どんな資格?

中小企業診断士を一言でいえば「経営コンサルタント」の国家資格を持っている方で、中小企業の経営課題に対応するために会社の状況を診断し、そのうえで助言を行う専門家として、今も日本中で活躍しています。
・国が認めた経営コンサルタント資格
戦後すぐの時代、かつてはこの診断能力や経営の助言能力について一定の基準が設けられておらず、自称すれば誰でもできる仕事でしたので、昭和初期の企業は「誰を選べばいいのか分からない、、、」というジレンマもあったのは事実です。
こういった背景から、企業が経営診断や経営の助言を受ける場合、その人選を容易にする必要がありました。
そのため、経済産業大臣が一定の水準の人物を登録することを目的に実施しているのが中小企業診断士の制度です。
実際に中小企業法では、中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事するものとして位置づけられています。
このように公認された経営コンサルタントが「中小企業診断士」といえるでしょう。
・中小企業診断士の主な業務
この中小企業診断士の主な業務は、企業の成長を促す戦略策定やその実行のためのアドバイスが挙げられますが、この業務以外にも中小企業と行政、金融機関などを結ぶパイプ役としての役割も求められています。
このような活躍ができる中小企業診断士も試験が設定されており、毎年8月下旬に試験を実施しています。
実施地区は全国の主要都市である札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、そして那覇(一次試験のみ)です。
そして中小企業診断士試験は一次試験・二次試験まで実施され、さらに口述試験もあることから難関資格と言われていて、過去6年間の合格率の推移を見ると、1次試験で17~42%、2次試験で18~19%となっています。
中小企業診断士の仕事(企業診断・経営コンサルタント)

中小企業診断士の仕事のメインが企業診断や経営コンサルタントで、顧客企業の相談相手となって、その企業の経営状況を診断し、アドバイスや提案を行うことで報酬をもらう業務です。
・経営コンサルティング業務とは
業務の流れとしては、依頼を受け、企業の調査やヒアリングを行います。
その結果、経営診断報告書の提出を顧客企業に行い、提案の実施をしてもらいます。
さらにその結果を踏まえて評価を行い、必要に応じて次の施策に活かしていくといった内容です。
元々、経営が苦しい中小企業を指導する目的で設置されたことから、経営診断が主な仕事になっていましたので、経営の立て直しや放漫経営の改善といった性格の業務だったことは確かです。
・どんな分野の経営コンサルティングがあるの?
しかし、現在は経営体制の整った中小企業が増えており、指導というよりは中小企業の良さや強みを前面に打ち出し、勝てるセグメントでNo.1を獲ったり、事業継承や利益改善など、さまざまな分野でのコンサルティング活動が行われています。
そのため中小企業診断士の業務は、大企業にはできない中小企業ならではの新しい技術やサービスを提供し、経済を活性化していくことが使命となっています。
かつて中小企業といえば、第二次産業である製造業や建設業が盛んだったとこともあり、大企業の傘下に入ってグループ企業の一角として、仕事を受注している状態でした。
しかし現在は、国も新しい経済の主役として中小企業を重視しており、中小企業の創造性と柔軟性を支える意味でもこの業務は非常に重要な役割をはたしているといえるでしょう。
中小企業診断士の仕事(講演)

中小企業診断士の仕事として「講演活動」もあります。
これは、商工会議所や業界団体、あるいは地域の企業の集まりといった場所が主な場所で、現在は中小企業診断士の重要な業務の一つとして位置づけられています。
実際、日本の中小企業診断士の団体である「一般社団法人中小企業診断協会」の調査では中小企業診断士の5人に1人は講演活動を行っていると言われています。
具体的なテーマとしては、依頼されたタイミングでのホットな話題がメインで、例えば、今の時代ですと「AI、デジタルトランスフォーメーション(DX)、働き方改革」などが挙げられます。
このほか、ローカル企業向けに集客セミナーなども行うケースが少なくありません。
もちろん、中小企業診断士のメイン業務から派生した企業経営や生産、そして財務管理、事業継承といったスタンダードな話題をテーマにしているケースも見られます。
いずれも中小企業診断士の豊富な知識や経験による内容で、専門家ならではの視点での講演は多くのニーズがありますが、言い換えれば、常に新しい話題についていけるように日々努力することが求められる職種といえるでしょう。
中小企業診断士の仕事(執筆)

中小企業診断士の知られざる業務として「執筆活動」があります。
実は中小企業診断士にとって執筆は活動の大きな軸であり、他の業務と並行して行いたい業務です。
執筆一筋で活動されている中小企業診断士の方はごく少数ですが、コンサルタント業務の傍らで行うというケースは珍しくありません。
それに執筆といっても最近はブログなどもありますし、雑誌などのニーズもあります。
また、補助金の提出サポートなど、単独での作成や提出代行は行政書士などの業務範囲になってしまいますが、作成の助言や顧客企業の代わりに一部を作成をすることは中小企業診断士でも可能です。
このように企業診断やコンサルタント業務の一端として補助金や助成金の紹介や作成補助といった業務もできるのです。
最近のコロナで注目されている中小企業診断士の業務として取り組む中小企業診断士の方も多く、スキルの幅が広がったり、実績になったりといったメリットもあるため、中小企業診断士を目指す場合は取得後挑戦してみたい分野といえるでしょう。
中小企業診断士の必要性

中小企業診断士は、「中小企業支援法」に基づく国家資格ではありますが、業務独占といって資格を持っていないとコンサルタント業務ができないというものではありません。
そのため、コンサルタントだったら有名コンサルタント企業に依頼すればいいという方もいるでしょうが、中小企業診断士の役割はとても重要で、資格としても必要な存在です。
公認された国家資格取得者という信用は顧客からの信頼を得やすいだけでなく、行政や中小企業診断士同士、他の士業のネットワークも利用できます。
そう言った意味で、無資格でコンサルタント業務を行うより新規顧客を獲得しやすいといえるでしょう。
また、企業が関わる助成金申請の場合、中小企業診断士のチェックが必要な部分もあるなど、一部業務独占になっているところもあります。
さらに転職時に有利な資格として企業も優遇しており、AIにはできないコミュニケーションスキルや概念化能力を強みにすることで需要が増え続けるとされていますので、決して必要のない資格ではありません。
中小企業診断士を取得するメリットは?

中小企業診断士を取得するメリットは、独立が可能、転職が有利、社内での信頼が増すといった3つが挙げられます。
・中小企業診断士として独立
中小企業診断士は独立してコンサルタント事務所を立ち上げることができます。確かに無資格でもコンサルタントとしての活動は可能ですが、顧客の信頼度はまるで違います。
独立しても多くの中小企業の顧客から信頼されやすいため、無資格コンサルタントよりも仕事も得やすいと考えられますが、実績が乏しいと実践経験豊富な無資格コンサルタントよりも信頼を得ることは難しいです。
・転職にも有利
中小企業診断士の資格を持つことは「転職にも有利」に働きます。
先ほど触れたとおり、中小企業診断士は経営のアドバイスや企業診断を行える仕事です。
日本にある中小企業は、2016年時点では「359万社」という統計数値が出ていますが、その中で経営に困っている中小企業は山ほどあり、その問題は単純なものではなく根が深く複合的な難しい問題がほとんどです。
ですので、さまざまな業務経験や人生経験を積んだ人の方が、転職にも有利に働く場合があります。
・社内での信頼UP
中小企業診断士の資格を持つことは「社内での信頼もUP」します。
なぜなら、日本版MBAという別名もあるように、日本で中小企業診断士の資格を持っていると、海外のMBA(経営学修士)取得者のような扱いになることが少なくありません。
そのため、特に中小企業においては、社内に中小企業診断士のような全体を俯瞰して経営判断できる人物がいると、企業も部分最適のような改善ではなく、全体最適の改善ができるようになるため、経営が有利になると考えられます。
このようにメリットは多く、目指すのに十分な理由がある仕事といえますが、合格までの道のりは長く、十分な学習と対策をしておくことが必要です。