行政書士といえば、「許認可のスペシャリスト」というのは知られていると思いますが、具体的に「どんな仕事するんだろう?」とよくイメージが湧いてない方もたくさんいらっしゃいます。
ですので今回は、行政書士試験合格を目指す受験生の方々に向けて、「行政書士の仕事とはどんなものか?」ということを簡単にお伝えします。
この記事の目次
行政書士って、どんな資格?何する人?
行政書士とは?
行政書士は、役所(行政)に提出するあらゆる書類を本人に代わって作成し、届出の代行などを行える資格です。
言い換えれば、行政書士の資格がないと、親族以外の人間が本人に代わって書類を書いたり、役所に書類を持っていったりといったことができません。
実は、この「行政書士」資格の存在は重要で、日本国内だけでも約1万種類を超える届出の書類が存在するといわれています。それらをすべて本人の代わりに書けて、しかも手続きの代行まで出来てしまうのが行政書士の資格なのです。
例えば、飲食のお店を開きたいけど、書類を作るのが難しくて理解できないといった場合があります。
そんな時でも、行政書士に依頼すれば書き方のアドバイスをしてくれたり、書類を作成してくれたり、あるいは代わりに保健所などの関係機関に提出してくれたりもしてくれるのです。
また、建設や農業など様々な仕事で市役所や国の機関に許認可の書類を提出したいといった場合も、問題ありません。
行政書士は、専門家の自分が理解できないような書類でさえ、簡単なヒアリングだけで書類を作成してしまうような力を持っています。
行政の書類や法律などが絡むことといえば、つい弁護士や司法書士といった専門家をイメージします。しかし、行政書士も行政分野においては、法律の専門家として大いに活躍できる資格といえるでしょう。
行政書士ってどんな仕事?簡単にわかりやすく解説
行政書士を簡単に説明すると、官公庁(区役所や市役所など)に提出する書類の手続き代行を行う専門職です。※書類の作成・代行が可能で業務に関しては広範囲です。(独占業務状態あり)
国家資格でいわゆる8士業の一つです。8士業とは「弁護士、弁理士、社会保険労務士、海事代理士、司法書士、税理士、行政書士」のこと。
行政書士が取り扱う書類または届出・許認可は非常に多く、仕事としても奥深いものがあると言われております。書類を作成はもちろん、届出・許認可において相談業務もあるため幅も広いです。
現在は「行政書士」となっておりますが、その前身としては「代書人制度」があります。(この点は司法書士もですが代書人としての一般的な業務はほとんどが現在の行政書士です)
当時(明治時代)、文書作成を主要業務としていた代書人です。代書人が上記で挙げました官公庁(区役所や市役所など)に提出する書類の作成を行っていました。つまり、大変歴史のある専門職であります。
現在、行政書士になるには「行政書士試験に合格する」、「指定されている資格を有する」、「国や地方公務員として行政業務を20年以上担当する」のいずれかにまずは当てはまる必要があります。
その上、各都道府県経由で登録を受ける必要があります。
行政書士はどんな仕事を行うの?
上記の通りで、官公庁(区役所や市役所など)に提出する書類の手続き代行を行う専門職ですので、それに付随した仕事を行うことになります。
例えば、建設業許可申請や内容証明作成、風営法許可申請や帰化申請などがありますが(他にも非常に多くあります)、これら許可申請の書類作成から提出代行を行ったりする仕事を行政書士は行います。
また、行政書士ごとに得意分野が分かれており、自分に合う業務を行っていくというスタイルも取りやすく、例えばペット法務(ペットの登録申請や取扱業務申請)やドローン許可、キャバクラ専門、古物商許可専門といった形です。
そのことからも、アイデア次第では非常に多くの仕事が可能になります。
さらに言うと、上記に付随する相談業務もあると言え、相談に乗るコンサルティング的な仕事も行う場合も比較的あります。
また、別角度から見ていきますと、行政書士試験を突破して行政書士になった場合、その経験を生かした仕事というものもあります。
例えば、塾の講師が挙げられます。(他にもあります)
行政書士でありながら行政書士試験対策の講師という仕事を行っている人もおり、やはりその意味でも非常に幅広い仕事を行うことが出来ると言えるかと思います。
身近な街の法律家「行政書士」に頼めること・相談できること
弁護士に頼むにはちょっと、、、と思うような案件においても比較的気軽に頼めるという意味です。
例えば、上記で挙げております「ペット法務」はその典型例かもしれませんが、ペットの登録届けだけではなく、ペットの犬が誰かを噛んでしまった、、、その場合は「咬傷被害届」の提出なども含みます。
実はペットが誰かを噛んで傷つけてしまった場合は、そのことを自治体に届けなければならないのですが、そのような事故の相談も身近な街の法律家である行政書士に相談することが出来ると言えるでしょう。
また、ちょっとした契約書の作成や内容証明といった身近ではあるものの一般人には作成がやや難しい面があるという書類作成も頼みやすいです。
弁護士にそれだけで相談に行くのは、、、と思っていても行政書士になら気楽に頼めるという人も結構いるからです。
あとは会社設立ほどではないものの、個人事業で中古品を取り扱う事業を副業でやりたい!という時もかなりラフな感じで相談に行くことが可能です。
古物商許可専門の行政書士もかなり多くおりますし、インターネット上でもすぐに見つかりますし、弁護士でも可能ですがやはりそういった手軽な案件はより身近な街の行政書士のほうが頼みやすい方も多いでしょう。
行政書士にしかできないこと3つの仕事を解説
では具体的に、行政書士が行える3つの仕事を解説します。
行政書士の仕事(書類作成)
行政書士の仕事として、最も多いのが「書類作成」です。
これは、先ほど紹介した行政に提出する許認可の書類などを本人に代わって作成する仕事になります。本来は、本人が自分の力で書類を作成し、行政に提出することが基本です。
しかし、一度こういった書類を作成した経験がある方なら分かる通り、非常に手間がかかるうえ、分からないケースもあります。
さっぱり分からずに市役所の担当者に教えてもらってやっと提出したという方もいるのではないでしょうか。そう言った悩みも行政書士に相談すれば、すぐに解決してくれます。
専門的な知識と、書類の書式を照らし合わせて、あらゆる行政書類の作成を代行してくれます。具体的には、次のような専門的な書類も作成可能です。
- 各種契約書
- 示談書
- 協議書
- 内容証明
- 定款
- 実地調査に基づく各種図面類(位置図・案内図・現況測量図等)
- 各種議事録
- 申述書等
- 遺産分割協議書
このような、一般的な知識では作成困難と思われるような書類も問題なく作成してくれるでしょう。もちろん、補助金や助成金の申請書や車庫証明のような比較的簡単な書類も作成できます。
行政書士の仕事(手続代理)
行政書士の2つ目の仕事として、「手続代理」が挙げられます。
これは、本人に代わって必要な監督省庁や業績簡易書類の提出や手続きの代理を行う業務です。
例えば、お店の開業をする予定だけど、今は勤務していて平日に行政の窓口へ営業許可の書類を持っていけないというケースで活躍します。このようなケースでも行政書士に依頼すれば、本人に代わって作成した営業許可の申請を行ってくれるでしょう。
また、県庁所在地から遠い場所に住んでいて、郵送もダメな書類を県の関係施設に提出しなければいけないといった場合も代わりに行ってくれます。営業許可の申請を中心に次のような許認可の代行も可能です。
- 建設業許可
- 会社設立
- 農地の転用や移動許可
- 飲食店営業許可
- 産業廃棄物許可
- 帰化申請
- 風俗営業許可
先ほど紹介した車庫証明なども代行して提出を行ってくれます。平日、しかも決められた時間しか対応していない行政の各機関に対して、申請の手続きを代行してくれる行政書士は、非常に重宝する存在といえるでしょう。
行政書士の仕事(相談業務)
行政書士の仕事として見落とされがちなのが、相談業務です。
行政書士は、行政のあらゆる書類を作成する業務から、法律的な知識も豊富です。そのため、顧客が抱える法律的な問題に対して、法的なアドバイスもできます。
また、行政の法律に則ったビジネス上の提案といったコンサルタントのような業務も対応しています。
さらに、この法律相談業務から派生して、成年後見や行政不服申立の代理、ADR(裁判外紛争解決手続)の業務もできます。ADRとは、裁判を起こさずに中立的な、信頼できる専門家に仲立ちしてもらい、解決を図る制度です。
代表的なものとして、国民生活センター紛争解決委員会によるADRが挙げられます。これはエステの効果などを巡ってエステと返金のトラブルを起こしてしまったときなどに行われます。
ただ、国民生活センターの専門家が仲介に入って解決に向けて話し合いをする、この仕組みですが手続きに手間がかかるのが現状です。
しかし、行政書士に相談すれば手続きの方法などをアドバイスしてくれるので、
- 相手と直接交渉してきたが、解決しそうにない
- 裁判できるだけのお金がなくて泣き寝入りしかない
といったトラブルの解決もアシストしてくれるでしょう。
このように行政書士は、法律相談料の相場も弁護士や司法書士よりも安いため、気軽に法律相談できる街の法律家といったイメージの業務も行っています。
行政書士の仕事3つのやりがい
行政書士のやりがいは、実際に現場で活躍する行政書士(実務家)によって異なります。
ただ、主に言われれることとして、
- 対応できる業務が想像以上に広い
- 顧客開拓がやりがいがある
- 感謝されることが多い
といった点が挙げられます。
冒頭でもお話しした通り、「①対応できる業務が想像以上に広く」行政に関する書類は1万種類を超えるといわれています。しかも、この書類は様々な政策が立案されるごとに生み出され、更新されていきます。
つまり、少しずつ仕事の範囲が変わり、そして広がっているということを意味しているのです。縮小、消滅といった言葉が多い日本の各分野にあって、拡大していく分野というのは、それだけでやりがいを感じられるでしょう。
「②顧客獲得」もやりがいを感じる点です。
一人の顧客を満足させることができたら、そこから派生してどんどん顧客が増えていきます。そして、意外なところでつながって、それが新たな顧客をうみだすことすらあるのです。こういった顧客間のつながりを知ったり、顧客が増えていったりといった点は、非常にやりがいを感じるでしょう。
最後に「③感謝されることが多い」ということです。
行政書士は、人を訴えたり、トラブルに首を突っ込んだりといったことがありません。また、裁判で負けるといったこともないでしょう。難しく悩んでいた行政書類を代わりに作成することがメインの仕事なので、人助けをすることがほとんどです。その結果、感謝につながることが多く、人に恨まれることのないという点もやりがいにつながるでしょう。
行政書士資格を取得するメリットは?
行政書士を取得するメリットは、独立できること、世の中の仕組みが理解できること、そして自分自身の可能性が広がることです。
行政書士は、サラリーマンの資格ではなく、自分で事務所を開設して独立できる仕事です。そのため、自分がメインとなって仕事を進められるのは、大きなメリットといえるでしょう。
また、世の中は、様々な行政の政策によって動いています。その動きで求められる各種書類を提出、申請代行することで、世の中の流れを肌で感じられます。
そして、前職や学生では体験することがなかった、様々な行政の関連機関に出入りしたり、企業や個人宅を訪問することで、自分の可能性が広がっていきます。
もちろん、これら以外にも多くのメリットがありますから、行政書士の魅力は尽きません。