行政書士は行政手続を専門とする法律家であり、試験合格した上で、日本行政書士会連合会が備える行政書士名簿への登録を受けなければできない仕事です。合格率は毎年10%前後という難関国家資格です。
また、行政手続の専門家である行政書士の資格をもっと活用するためには、他資格とのダブルライセンスという道もあります
行政書士の資格を活用できる、さまざまな方法がありますので、この記事では、皆さまが行政書士の資格をもっと活用できるように、
- 行政書士と司法書士の違いは?どちらがおすすめ?
- 行政書士から司法書士へのステップアップ
- 行政書士と弁護士って何が違うの?
- 行政書士と社会保険労務士、ダブルライセンスのメリット
- 行政書士と税理士の違いとダブルライセンスの魅力
- 宅建士と行政書士はどっちが難しい?違いとダブルライセンスの魅力
を解説していきます。
ぜひ、この記事を読んで行政書士資格の活用について知識をつけ、夢に向かってモチベーションを高めてください。
この記事の目次
行政書士と他資格の違いやダブルライセンスの魅力
行政書士の資格を活かすためのダブルライセンスや他資格との違いなどを解説しました。
行政書士と司法書士の違いは?どちらがおすすめ?
行政書士と司法書士の違いは、管轄官庁が司法書士は法務省、行政書士は総務省と違っており、どちらも業務独占の国家資格ですが、業務内容と試験難度が違います。
違い①:取扱える書類が違う
まず、行政書士と司法書士との業務の違いとして、取扱える書類が違います。
行政書士は、市役所や都道府県庁など官公署に提出する許認可等の書類や権利義務・事実証明に関する書類(内容証明)を作成するや、その手続の代理が主な業務になります。また、永住許可や在留資格認定証明書、在留期間更新など外国人に関する手続きも行います。
一方で司法書士は、不動産登記や商業登記などの登記業務または供託に関する手続きの代理が中心です。
つまり、行政関係への書類は行政書士、法務局などへの書類は司法書士が担当するといった点で業務上、両者は大きく異なります。
違い②:試験難易度の違い
次に試験難度に関しては、司法書士の方が圧倒的に難易度が高いと言えるでしょう。
行政書士試験の2022年度の合格率は11.18%と狭き門ですが、司法書士試験に至っては、2022年度の合格率は5.18%となっています。
さらに試験内容も行政書士の場合はほとんどが択一式や多肢選択式を採用し、一次試験のみで合否が決まるのに対して、司法書士は記述式も多く、さらに二次試験では口述試験も設けられています。
このように試験難度を考慮した場合、行政書士の方が敷居が低く、まずは比較的取得しやすい行政書士の試験に合格して、行政書士の資格を取得することがおすすめです。
もちろん法務局関係の業務や企業の登記といった仕事に携わりたいのであれば司法書士を目指すのもおすすめといえます。
行政書士から司法書士へのステップアップ
先ほども触れたように、行政書士から司法書士へのステップアップを検討するという手もあります。
その理由として、行政書士の知識が司法書士試験に生かせること、行政書士の業務をベースにして司法書士の業務案件も取得できること、どんな書類代行の業務も受託できることが挙げられます。
メリット①:行政書士の知識が司法書士試験に活かせる
まず、行政書士の試験で学んだことは司法書士の試験にも活かせます。
たとえば、憲法、民法、商法&会社法といった科目は行政書士試験でも学びますので、その科目については司法書士試験の勉強で有利に進められます。しかし、民法と商法&会社法は行政書士の知識に比べかなり深いため、一から勉強する必要があります。
また、行政書士を学び、法律の基礎的な知識を身に着けているので、試験勉強の理解度もアップした状態で臨むことができ、その点もアドバンテージです。
メリット②:司法書士の業務案件も取得できる
次に行政書士の業務をベースにして司法書士の業務も受けられます。
たとえば、会社設立の手続きをする場合、定款の作成、公証人役場での認証手続きなど行えますし、建設業の営業許可の申請を代行しつつ、建設工事を行う土地の登記手続きを受けるといったことも可能になるでしょう。
メリット③:書類代行の業務も受託できる
最後が行政書士の業務範囲を意識することなく横断的に仕事ができることです。
行政書士が作成可能な書類は1万点以上に及ぶと言われますが、「登記」など行政書士だけの資格では、司法書士の業務に触れ司法書士法違反となってしまう事例もあります。
そうなった場合、その仕事は司法書士との協業で行うか、紹介という形になりますが、行政書士から司法書士のダブルライセンスできればこういったことなく単独で受託することが可能です。
このように行政書士から司法書士にステップアップすることは、資格取得がしやすくなることや業務を包括的に受けられること、さらに業務範囲を気にすることなく業務に当たれることといったメリットが得られます。
行政書士と弁護士って何が違うの?
行政書士と弁護士の違いは、職務の内容と権限の点で大きく異なります。
・弁護士の業務
まず、職務の内容としては、弁護士は依頼を受けてあらゆる法律事務を処理することを職務とする専門職で、法律事務全般を取り扱うことができる弁護士は、司法書士の業務や行政書士の業務、さらには訴訟や裁判の弁護などができます。
・行政書士の業務
行政書士は官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理など、一部の業務に限られるといった点で、行政書士は行政に対する書類の作成と代行ができるだけにとどまっています。
・弁護士と行政書士の業務の違い
たとえば、離婚問題を例に挙げれば、弁護士は離婚に必要な書類の作成から離婚調停、さらには離婚にあたっての裁判の弁護といった一連の業務が対応可能です。
弁護士はそれらの権限はもちろんこと、示談交渉や弁護人として弁護をする権限もあります。
裁判の判決を行ったり、検察官のような公務は弁護士でも行う権限はありませんが、法律に対して非常に幅広い範囲での権限を持っているといえるでしょう。
一方、行政書士の場合は、裁判の代理人を務める権限はないものの、訴訟手続きによらない調停や仲介手続きによって、紛争解決をサポートできます。
そのため、行政書士は書類作成以外の業務や権限がないとは言い切れず、離婚協議書の書類作成や提出代行のサポートという形で寄り添うことは可能です。
行政書士と社会保険労務士、ダブルライセンスのメリット
行政書士の資格を持ちながら社会保険労務士の資格を取得し、業務を行うことも可能で、魅力的なメリットも存在します。
そのメリットは、①業務範囲が広くなる、②収入の安定に繋がる、③一元的に顧客をサポートできるといった点が挙げられます。
・メリット①:業務範囲が広がる
まず、行政書士と社会保険労務士のダブルライセンスのメリットとして、単純に業務範囲が広がります。
役所(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等)に提出するあらゆる書類を本人に代わって作成し、それらを官公署に代理で提出する届出代行などを行える許認可業務のスペシャリストである行政書士の業務。
それに加えて、社会保険や労務、福利厚生、年金など、労働法や社会保険(健康保険・雇用保険)に精通した法律の専門家として社会保険労務士の業務として行うことが可能です。
これによって、行政書士だけでは対応できなかった業務を一人で行うことができます。
・メリット②:収入の安定に繋がる
次に、行政書士と社会保険労務士と二つの業務を行うことで、業務の幅が広がるため収入がより安定します。
業務に幅を持たせることができるため、新規顧客の開拓がしやすくなり、行政書士目的の顧客に対して社会労務士のサービスが提供できたり、社会保険労務士目的の顧客に対して認可などの行政書士のサービスが提供できるようになります。
これによって単価も上がり、収入がアップする可能性も上がるでしょう。
・メリット③:一元的に顧客をサポートできる
また、行政書士と社会保険労務士の二足の草鞋を履くことにより、従業員の社会保険の管理だけでなく、各種申請といった教務もそのまま自分だけで対応することが可能となるため、一元的に顧客をサポートできるようになります。
これによって切れ目のないサービスが提供できるようになり、顧客満足度を高められる点もメリットです。
行政書士と税理士の違いとダブルライセンスの魅力
行政書士と税理士の違いとダブルライセンスの魅力について解説します。
・行政書士と税理士の違い
まず、行政書士・税理士の違いとして、行政書士は、本人や会社に代わって認可などの手続きができる。税理士は、税務に関する業務ができる、といった違いが挙げられます。
行政書士は、役所(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等)に提出するあらゆる書類を本人に代わって作成し、それらを官公署に代理で提出する届出代行などを行える許認可業務のスペシャリストです。
それに対し、税理士は税務業務や税務コンサルティングなど税理士の独占業務に従事する税務・会計のスペシャリストになります。
・ダブルライセンス資格
税理士は、税理士の免許を持っているだけで行政書士としても登録できるため、一度にダブルライセンスを保持することが可能です。
一方、行政書士の場合は、ステップアップして税理士の免許を取得することでダブルライセンスの業務が可能になりますので、こういったダブルライセンスも両者の違いといえるでしょう。
・行政書士と税理士のダブルライセンスの魅力
行政書士と税理士のダブルライセンスの魅力として、企業や個人事業主へお金の面で切れ目のないサービスが提供できることが挙げられます。
たとえば、会社の設立を行政書士の面からサポートし顧問契約を締結することで税理士業務を提供できます。
また、資金調達などの目的で助成金や補助金の申請をする場合も、行政書士の資格を生かして申請の手続きを代行し、企業の支援をすることも可能です。
このように税務から補助金、助成金による資金調達業務といったお金に関する一連の業務を自分だけで対応できるようになるのは、大きな魅力です。
宅建士と行政書士はどっちが難しい?違いとダブルライセンスの魅力
・宅地建物取引士も行政書士、どっちが難しい?
宅地建物取引士も行政書士も簡単には取得できない難関資格ですが、より難しいのは行政書士です。
なぜなら宅地建物取引士試験の2022年度の合格率は17.0%ですが、行政書士試験の2021年度の合格率は11.18%しかないからです。
極端に大きな差があるわけではないものの、事実として行政書士のほうが合格率は低いです。そのため取得するのがより難しいのは行政書士だといえるでしょう。
・重複する学習範囲
ただ、難しいのは間違いありませんが、両方とも資格を取得するダブルライセンスには魅力があります。
なぜなら宅建も行政書士も学習範囲に重複している部分「民法」があるため、結果的に学習するボリュームの削減が見込まれるからです。
ただ、注意しないといけないのは、行政書士と宅建士で重複している科目は、民法のみで、行政書士は行政法と民法が中心、宅建士は建築・不動産関連の法律を中心に出題されます。
どちらか一方にしか興味がないなら、無理に宅建と行政書士のダブルライセンスを目指す必要はありません。
ですが、どちらも興味があって意欲がある場合は、とりあえずどちらか一方を学習し、記憶が新しい内にもう一方も学習してダブルライセンスを目指しましょう。
・選択肢が広がるダブルライセンス
首尾よく学習できてどちらの資格も希望通り取得できれば、間違いなく仕事の選択肢に幅が出ます。
独立開業できる行政書士、不動産業界への就職・転職できる宅建士。
どちらか好きな方へ進むことができますし、場合によっては両方の資格を活かした仕事も可能です。
ダブルライセンスなら、自分のライフプランに合った働き方ができます。